「ボールを投げると肩が痛む」

という選手は、世代問わず多いと思います。

この記事を見ているあなたもその1人かもしれません。

自分は理学療法士として、今まで病院で勤務していました。

学生年代~大人世代まで、野球選手のリハビリを担当したことが多々あります。

今回はその経験を基に、肩が痛み要因をいくつか紹介していきます。

正直申し上げますと、
これから要因をいくつかあげますが、
「肩の前側が痛いから必ずこの要因を改善すれば良い」
という訳ではないです。

SNS上でも数多くの肩の痛みをとるトレーニングやストレッチが載っていますが、
選手によって原因が違うのが事実です。

そのトレーニングが選手にハマる場合とハマらない場合があるので、
痛みが出る原因を探って、その選手にあったトレーニングを提供する必要があります。

これから何個かの要因を上げますが、鵜呑みにせずに
自分の生活背景やプレースタイルを考えて取捨選択していってください!

どうしても分からなければご相談くださいね!

 

痛みが出るタイミング

まず最初に考えるのは、
投球時のどのタイミングで痛みが起こるのか?

肩の前側に痛みを訴えるケースは、

・トップ~最大外旋位(以下MER)

・リリース~フォロースルー

で多いと思います。

今回はトップ~MERのお話をしていきます。

 

トップ~MER

トップ~MERは以下の写真の場面を指します。

画像は素材から引っ張ってきたので、プロ選手の動画を見ると良くわかると思います。

この動作での肩関節は、
「外転・外旋」動作の複合運動が生じています。

・外転:腕が身体の外側に広がって、脇が広がる動き

・外旋:上腕と肘から先が背中側に動く運動

運動学的用語となりますが、
最近の野球界では選手も知っていることが多くて関心しています。

自分は現役のころ全く知らなかったので。笑

それでは、要因を1つずつ解説していきます。

1.解剖的・運動学的要因

この肩関節外転・外旋動作では、
上腕骨頭という上腕骨の付け根の部分が
前側に出るように動きます。

肩の後ろは筋肉などの軟部組織が多く存在していますが、
対照的に前側は軟部組織が少なく、比較的ルーズになりやすい構造となっています。

その構造的特徴と外転・外旋動作の反復で、
「上腕骨頭は前方へ偏位しやすい」状態となることが多いです。

したがって、野球選手の肩の特徴は、
「外旋可動域が広く、内旋可動域が制限されている」
ケースがほとんどです。

自分の経験としては、
野球選手の95%以上がこういう特徴を持っていると思います。

上腕骨頭は肩甲骨に対して、ソケット状にはまっている構造です。

外旋可動域が広く、内旋可動域が制限されていると、
上腕骨頭が前に逸脱するポジションとなり、
さらに外転・外旋動作が加わることで、前方組織へ過剰なメカニカルストレスが増強します。

チェックポイント

 

2.肩後方軟部組織の拘縮

1.の解剖的・運動学的要因とお話は重なるのですが、
上腕骨頭が前方へ偏位する要因に

「肩後方軟部組織の拘縮」があります。

これもほとんどの野球選手が抱えている所見の1つです。

後方軟部組織の中には

・棘下筋
・小円筋
・大円筋
・三角筋後部線維

・上腕三頭筋
・広背筋

など、肩の後ろの筋肉が多いです。

野球選手は、
「外旋可動域が広く、内旋可動域が制限されていることが多い」
と先ほどお話しましたが、

内旋運動の際は、
上腕骨頭が後方へ動かなくてはなりません。

後方軟部組織の拘縮、つまり硬さがあると
上腕骨頭が後方へ動かなくなります。

その結果、上前方に逃げるように動くので、
肩前方の痛みやインピンジメントの所見に繋がってしまいます。

 

なぜ、後方の拘縮生じやすいのか?

原因は様々あります。

そもそも筋肉が硬くなる要因は、

・その部位を過剰に使い過ぎている
・その部位を使えていない、認識できていない

に分類されていると思います。

過剰に使い過ぎる要因

後方が最も過剰に働くタイミングは、
「フォロースルー」だと考えています。

フォロースルーでは腕が強く振られるため、
腕が前側に投げ出されることになります。

ここで、肩後方の筋肉が働かないと肩は外れてしまいます。

肩が抜けないように、ブレーキをかけているのが後ろの筋肉です。

この時は「遠心性収縮」という、
筋肉が伸ばされながら働くということが起こっています。

筋肉にかかる負荷は「遠心性収縮で最も大きい」と言われています。
一般的な縮める収縮形態よりも負荷が大きいのです。

このメカニズムによって、肩後方軟部組織が過剰に使われることが示唆されます。

使えていない・認識できていない要因

これは、後方の筋肉の中でもされに選別されますが、
棘下筋・小円筋などの腱板機能が十分でない場合です。

皆さんが良く耳にする言葉では
「インナーマッスル」ですね!

ここで陥りがちなのが、
「インナーを鍛えればいいんでしょ?」
という間違った認識です。

鍛えること自体は間違いではないですが、足りないです。

なんで、インナーが発揮しにくくなってるの?
このことを忘れてはいけません。

三角筋などのアウターが過剰に働いているから、インナーが効きにくい?
そもそもなぜアウターが過剰に働くの?
筋同士の動きが悪いからインナーが働きにくい?
脊柱や胸郭・肩甲骨との協調性はある?

などなど、インナーを鍛える前に整備しなくてはいけないことがいっぱいあります。

インナーを鍛えて痛みが全員消えるなら、
こんなに肩が痛い人は出てこないです。笑

もちろんチューブを使うトレーニングも、
筋の滑走性や収縮感覚を掴むのに用いることはありますよ!

チェックポイント

改善方法

3.中枢部の影響

MERでは肩関節が「外転・外旋」しますが、
これは肩だけの運動ではないですよね?

背骨は伸びなくてはいけませんし、肩甲骨や胸郭も動きます。
あとは、下半身の機能もありますね。

あー。考えなくてはいけない要素がいっぱいです。笑

1つずつなるべく簡単にお話していきます。

脊柱の要素

脊柱は背骨のことです。

背骨の運動は
・屈曲(フレクション):丸くなる動き
・伸展(エクステンション):伸びる動き
・側屈(ラテラル フレクション):横に傾く動き
・回旋(ローテーション):捻る動き
大きくこの動きが生じます。

動作の中では、これが複合して起こります。

MER単体で考えると、
伸展・側屈・回旋が生じていると考えます。
(ここでは触れませんが屈曲の要素も非常に重要です。)

全体がグローバルに動くのも大切ですが、
部分的に動くにも必要です。

特に伸展・回旋系だと「胸椎」が重要です。

上の写真の筋肉がついている部分が胸椎です。

胸椎は通常の姿勢では丸くなる構造があるので、
伸展させるのが苦手になる人が非常に多いです。

また、現代の生活背景を踏まえると
伸展以外にも動きにくくなりやすい部位です。

苦手だけど伸びなくてはいけない。
オーバーヘッドスポーツに肩の怪我が多い理由の1つです。

チェックポイント

改善方法

胸郭の要素

胸郭は「肋骨」のことですね!

胸郭も背骨を同じで3Dに動きます。

MERの時の胸郭は「前方へ拡張」します。
つまり「胸を張る」ポジションです。

最大の特徴としては、
「胸椎と関節をなしていること」です。

「肋椎関節」と言いますが、
肋骨が動くためには脊柱も動く必要があります。

ここで、
あれ?さっき胸椎って動かしにくい場所って言ってなかったっけ?
と思う方は、察しが良いと思います。笑

そうなんです。

胸郭・肋骨も動きが制限されやすいです。

また、胸郭は「呼吸機能の要素」
も入るのでさらに見る要素が増えるやっかいな部分です。

チェックポイント

改善方法

肩甲骨の要素

肩甲骨は皆さん聞いたことがあると思います。

肩甲骨は上下・左右・前後・斜め上、斜め下に動きます。
こちらも3Dに動きます。

MERの時の肩甲骨は、
・後傾:背中側に傾く
・内転(外旋):背骨に寄る
・上方回旋:斜め上に傾く
これらの動きが生じます。

肩甲骨は胸郭の上にくっついています。

嫌な予感がするかもしれませんが、
肩甲骨の動きは胸郭の動きに依存することが多いです。

つまり、胸郭が動きにくいと肩甲骨も動きにくくなります。

…。って感じですよね。笑

チェックポイント

改善方法

股関節・骨盤の要素

MER時の股関節に動きは、
軸脚・ステップ脚で違います。

軸脚は「股関節伸展・外転・外旋」
ステップ脚は「股関節屈曲・内転・内旋」
の動きが生じると考えます。

・屈曲:太ももがお腹に近づく動き
・伸展:太ももが背中が側へ向かう動き
・外転:太ももが外側に開く動き
・内転:太ももが内側に閉じる動き
・外旋:太ももが外側に捻じられる動き
・内旋:太ももが内側に捻じられる動き

屈曲・伸展の動きはわかりやすいと思うのですが、
内外旋・内外転の動きは投球動作に置き換えると想像しにくいと思います。

これは骨盤の動きの影響で起きているためです。

太ももが動くのではなく、骨盤が回旋する結果として
股関節の動きが生じているためわかりにくくなっています。

骨盤が回旋する結果として、
軸脚は外転・外旋し、ステップ脚は内転・内旋します。

チェックポイント

改善方法

4.中枢部と肩関節の関係性

以上のお話で、
MERを形成するためには肩の運動以外に、

脊柱や胸郭・肩甲骨、下肢の機能が必要だと説明いたしました。

資料によって多少の誤差はありますが、以下のグラフとなります。

だと言われております。

肩甲骨や胸郭・脊柱などの機能が低下し、割合が低下すると
相対的に肩関節の割合が増加します。

それによって、肩関節への負荷が増加します。

このように、
肩が痛くても肩以外に原因がある事が多々あります。

チェックをするときも、
肩の機能はもちろんですが、身体全体の影響を考える必要があります。

「木も見て森も見る」ということですね。

身体に不安がある方は、
是非専門家にチェックしてもらうことをオススメします!

もちろん当店でも対応いたしますよ!!

それではまた!

 

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